戦場に咲いた血の花 〜「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」 #50

成長したヤマギくんは、すごくきれいになっていた。

自分の腕いっぽんで食っていける、自信も実力も備えた大人の男のひとになっていた。

それでも、ヤマギくんの心のなかには、ずっとシノがいるんだな。

 

あ〜〜〜!シノはほんっとーにもったいないことしたな!

こんなに素敵な子が、好きっていってくれたのに!ぜんぶぜんぶ、シノにくれるはずだったのに!!

でも、シノだってぜんぶヤマギにくれたから。

あの日もらった命を、ヤマギは生きていくんだ。

 

―――――

 

私は、三日月がおそろしかった。

 

その潔さを、透徹した意志を、無慈悲な鉄槌を、「強さ」と呼ぶ者がいるとわかっていてなお、認めたくない気持ちがあった。

彼はつねに、自分が守るべきもののみを守る。そして、その彼が守るべきもの以外は、すべて「殺してもいい」ものなのだ。彼の殺していい範囲は、我々のような文明に守られている人間からすれば「野蛮」と表現するほかないほどに広い。

彼自身に「悪意」などない。だから、憎悪や執着といった、個人の感情で命を奪うようなことしない。

しかし、うるさい虫を払うように、邪魔なものは有無を言わさず「駆除」してしまう。

私たちのような、他人の死を感知することなくぬくぬくと生かされている者に、彼らの生をとやかくいう権利はない。それでも、三日月の「強さ」を称えたくなかった。

だって、彼が得たアラヤシキの能力は、無敵の力などではない。厄祭戦という殺し合いの歴史の果てに生まれた、ひとりの人間には背負いきれないほどの「業」だ。

そんなものを、仰ぎ見たくはなかった。

 

ラスタル・エリオンが投じた無慈悲な爆撃に、ヒロシマの原爆を、ハンター×ハンターでネテロ会長が奥の手とした貧者の薔薇を思った。

たとえ鉄華団が悪魔だったとして、あれほど人間性を欠いた攻撃がほかにあるか。

ラスタル・エリオンを血塗れた戦場をジオラマみたいに見下ろして、叫びも爆音も聞こえない彼方から、自分と同じ人間たちに「お前たちは死んでいい」と一方的に通告し、ボタンひとつでその尊厳を踏みにじったのだ。

烈しい憤りを感じると同時に、心底ぞっとした。

 

もしいま戦争が起こったとして、私たちだって同じことをするんじゃないか。

私たちには、鉄華団のように命を燃やして前線に立つ覚悟なんてない。自分たちの既得権益を守るため、脅威と目される他者を殲滅して、かりそめの安寧を得ようとするのではないか。

現実に、世界はそういう方向へと傾きつつある。

 

このアニメが描いてきたものは、弱者が強者を打倒する革命譚でも、正義が悪を駆逐するヒーロー活劇でもなく、無慈悲で不条理な戦場の真実だ。

憎しみは連鎖し、大きすぎる力は禍を呼ぶ。

かつて、歴戦の英雄たちが戦犯として裁かれてきたように、鉄華団もまた、人知を超える力を手にした呪いを受けた。

クランク中尉を葬ったことではじまった三日月の運命は、同じように戦場で葬られるかたちで幕を閉じた。

バッドエンドともいうべき、残酷で無慈悲な結末。

それでも、私はこのときはじめて、三日月を自分と同じなんだ、と感じた。

守るべきもののためならどこまでも残酷になれる三日月が怖かった。

でも、いまも地球上で起こっている犠牲すべてに目をつぶれる私たちだって、彼らと同じように残酷なのだ。

 

三日月は、鉄華団は、すべてを奪われて死んだのだろうか。すべてを失ってしまったのだろうか。

そんなはずがない。彼らの死は無意味ではなかったはずだ。何かを得た代償に、彼らは失ったのだ。

鉄華団の少年たちは、徹頭徹尾、生きるためだけに戦って散った。彼らは戦うほかに生きるすべを知らなかったからだ。

そして、彼らの大切なものはすべて、まだ見ぬどこかではなく戦場にこそあった。

大義も名誉もない、名もなき者たちの死。

彼らの死はいつか忘れ去られるだろうが、それでも、彼らが守り抜いた大切な人たちが、彼らのことを覚えている。

 

世界は簡単には変わらない。

それでも、憎しみや嘆きさえ飲み込んで前へと進むクーデリアのように、幾多の過ちを繰り返し、なおも今日より明日はよくありたいともがき続けていくしかないのだ。

 

いまこの時代に「戦争」を描くというのは、とても大変なことだったと思う。

それでも、鉄華団ひとりひとりの人生に向き合って、物語を届けてくれた制作陣に感謝したい。

久々にテレビの前で手に汗握りながら観たアニメでした。ありがとうございました!

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