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    「HAPPY」 BUMP OF CHICKEN

    BUMP OF CHICKEN
    (2010-04-14)

    アマゾンでは、アーティスト名が藤原基央になっているけど、ファンとしてはちゃんとBUMP OF CHICKENと表記してほしいところ。4人でバンプだから!めんどくさいだろうけど、ここ譲らないよ!こだわるよ!

    「R.I.P」でも感じたことだけど、「HAPPY」をきいていっそう確信した。バンプは大人になったんだ。変わってしまった、かつてあったなにかが失われてしまった、というような意味じゃない。彼らが歌っていることは、ガラスのブルースのころから、なにひとつ変わっていないとさえ思う。
    天体観測がブレイクし、周囲の状況がめまぐるしく変化するなか、彼らは何度も何度もこう云った。「俺たちは変わらないから」と。変わっていくものがあるとすれば、自分たちをとりまく環境のほうが変わっていっているんだと。生きていく者が、変わらずにいられるはずがない。それでも、まるで自分自身に云い聞かせるかのように、彼らは何度も何度も繰り返した。
    たとえ何千人の観客を前にしても、たったひとりにとどけたいんだと。
    矛盾に満ちた言葉を、それでも私は信じた。そして結ばれた信頼は、いまも裏切られずに繋がっている。

    「天体観測」は聴いているだけで、焦燥に掻きたてられるような曲だった。未来も過去もかえりみずに「いま」だけをかけぬける、ひりつくような思いが鳴っていた。あのころいつも、わけのわからない不安や倦怠や、意味もなく泣きたくなる感情を持て余していた。走りだしたくとも、走るあてがなかった。いま振り返ると恥ずかしくて布団にもぐりこみたくなる思い出だけど、だれだってきっと、経験のあることだろう。
    そうして穏やかに餓えた日々を切り裂くように、彼らの音楽は飛びこんできた。肩をつかんで揺さぶられるような鮮烈さで、「天体観測」は私の耳に、そしてもっと深いところへ、届いた。

    そうして知った痛みが 未だに僕を支えている
    「イマ」というほうき星 今も一人追いかけている


    切実に求め、手を伸ばし、掴もうとするのだけど、「僕」の手はからっぽのままだ。いっしょに星を見るはずだった「君」はもう、隣にはいない。雨に打たれて震えていた「君」の手を握ることすらできない。見えないものを見ようとして、見えているものを見落として。でも、それがつらく、かなしいことかといえば、そんなふうには思えない。
    失ったものも、見つからないものも、消えない痛みすらも、バンプの唄のなかでは幸福となんらかわらぬものとして在る気がする。悲しみも、喜びも、つまるところは、「今」を生きる者だけが感じとれるものだ。息をしているからこそ、失うことも、傷つくことも許される。だとすれば、痛みや喪失すらも、私たちの一部だ。
    ここには明るい励ましも、優しい慰めもない。終わりがあるから、生きられる。ひとは絶えず失いながら、みつかるとも限らないものを探し続けて、生きていくしかない。だれもが避けて通れぬ真実だけを歌う彼らの音楽に触れ、どれほど助けられたかわからない。


    混沌としながら、鋭利な刃のように冴えた「天体観測」と並べると、「HAPPY」は対局に位置するかのように思える。おおらかなメジャーコードに支えられた、伸びやかなメロディ。コーラスやハンドクラップをふんだんに盛り込んだあたたかなアレンジ。曲だけ聴けば、もうご機嫌なナンバーといってしまっていいくらい!
    でも、唄っていることは「天体観測」とまったく同じことなのだ。
    ただ、歳を重ねた分だけ、研ぎ澄まされている。
    これってなかなかできることじゃないと思うんだ。歳をとると、あきらめや、しがらみや、どうしようもないことがわかってしまって、グレーの部分がどんどん増えていく。いちいち白黒つけようとしてたら、とてもじゃないけど苦しくてやっていけない。生き抜くために濁っていくことを、責められるはずがない。
    でも、藤原基央は黒があって、白があるということを、ありのまま描きだす。

    悲しみは消えるというなら 喜びだってそういうものだろう
    誰に祈って救われる つぎはぎの自分を引き摺って


    このサビを聴いて、嘘じゃなく震えた。
    悲しみが消えるなら、喜びだっていつか消えてしまう。
    真実だろう。そのとおりだろう。永遠の幸福なんて、ありえないんだから。この間知り合いに、「バンプって暗いよね」と云われて全身全霊で反論しようとしてしまい、いつまでたっても大人気ない自分を猛省したんだけど、たしかに、そうかもしれない。
    こりゃ、世間的にみればどう考えても暗いよ!
    「喜びが消えるなら、悲しみだって消える」とも云えたはずだ。でも、云わなかった。現実はいつだって私たちにきびしい。失い、傷つき、悲しむばかりの人へどんな言葉を渡せるか。少なくとも、彼らには「いつかは忘れられる」なんて気休めは歌えなかった。
    だって、「そうして知った痛みが 未だに僕を支えている」んだから。
    何一つ忘れられることなく、彼らはずっと、弱さや矛盾を引き摺って歌い続けてきたんだから。

    だからこそ、最後に届けられた「一緒に」という言葉は、限りなく貴く、力強い。

    消えない悲しみがあるなら 生き続ける意味だってあるだろう
    どうせいつか終わる旅を 僕と一緒に歌おう


    bridge誌のインタビューで、藤原基央は、「一緒に」という言葉は、彼の中でトップクラスに上手く云えない言葉だと語っている。だからこそ、ここで「一緒に」と歌えたことはすごく温度があることだろうと。
    ほんとうに、愚かしいくらい不器用で、真摯なバンドだなあと思う。
    これほど痛烈なことばを重ねたすえにやっと、どうにか「一緒に」と唄えるのだ。
    彼らははじめて唄ったときから、たったひとりのあなたへ唄ってきた。そのたったひとりに届けるためには、ひと匙の虚飾も、無責任も許されない。多数決によって選ばれる事実ではなく、ひとりひとりの胸の内にだけある「真実」を差し出してみせる。

    藤原基央は生き続ける意味がある、とはいいきらなかった。
    あるだろう、というだけだ。
    ほんとうは、そんなものはないかもしれない。たとえ見つかったとしても、いつか消えるものでしかないかもしれない。それでもなお、願い、祈り、どこかにあるはずだと探し求める右往左往だけが、生きるということなのだろうか。どうせいつか終わる、長い旅路。それはひとりで進むしかない、孤独な道だ。バンプのいう「一緒に」はきっと、手に手をとってともにいこう、という意味ではない。ただ、少なくとも、同じように孤独に歩むだれかは存在する。口ずさめる唄がある。たったそれだけのことが、もうじゅうぶん、この長い道程を進むための勇気になりえる気がするのだ。

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