「憂鬱な朝」 3 日高ショーコ
毎巻心待ちにしている大正(推定)主従ロマン。
大正時代が大好きなのだけど、この時代の恋路は階級の違いで道の険しさが大きく異なる。
小田原の商家の幼馴染みが主人公のたけうちりうと「こゆるぎ探偵シリーズ」や、廓の幇間と味噌屋の若旦那のすったもんだを描く今市子「幻月楼奇譚」といった庶民ものがほがらかなラブコメディであるのに対して、公爵家の末息子である鷹司と海軍将校の父を持つ倉橋のコンビが織り成す幻想小説、かわいゆみこ「夢色十夜」や、この「憂鬱な朝」は身分と恋との板ばさみで、たやすく想いを通わすことのできない狂おしさに満ちている。
家制度が厳然と存在していたので、お家の存続が第一義の上流階級にとってはやはり、子を生すことのできぬ男同士の関係など当然ご法度。「憂鬱な朝」には桂木の出自をめぐる血脈の争いまでが絡まって、ますますドラマチックな悲恋の予感を漂わせている。
どんなに想いを訴えようと変わることのない桂木のかたくなさに、自分が変わることを決めた暁人。
桂木への激しい思慕を秘めたまま、暁人は佐条公爵家の令嬢との婚約話を進める。身分や血筋に拘らぬ生来のおおらかさを殺してまで久世家のために生きようとする暁人の姿に、望んでいたことだというのに桂木は心乱される。
「お前がそばにいればそれでいい」。これまで誰も与えてくれることのなかった熱にさらされ、ついに冷え切っていた桂木の心が氷解する。
ずっとほのめかされてきた桂木の出生の秘密があきらかになり、ついに暁人が一世一代の勝負にでました!
よくやった暁人!そうこなくっちゃ!
暁人の苦しい気持ちはわかる、わかるけど、暁人が投げやりになったらこの恋は絶対にうまくいかないよね。若いんだから、こずるく立ち回ったりしてないで、古臭いルールなんてぶち破ってみせてくれよ!!(←自由主義社会に生きる者の暴論)なーんて、若者の彷徨にじりじりしていたので、胸がすく思いがした。
表紙や口絵のイラストの構図が象徴的だが、たしかに暁人は久世家の旦那様でありながらも、あくまでまだ「子ども」として描かれている。彼の桂木への執着には、抱きしめてくれる腕を探す幼子みたいな頑是無さが仄見える。
でも、子どものままじゃきっと、桂木とともにいるは出来ない。
何より桂木自身が「愛されない子ども」なんだから。誰かがちゃんと、桂木を抱きしめてやらなけりゃ。
この苦難をこえて暁人が「子ども」から「男」になるのを見届けたいなあと、熱望している。
- 【読書】BL
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