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    「おとぎ話のゆくえ」 一穂ミチ

    ようやっと読めた。一穂さんの本は読むのに覚悟がいる。

    ボーイズラブは様式美を楽しむジャンルだ。
    作家は読者の求めるものをわかったうえで書いて、読者は作家の狙いを先読みして楽しんでいるところがある。まるでドリフのコントさながらの予定調和。自由奔放なようで、たくさんのお約束に縛られてもいる。
    私自身もこの一種閉鎖的な循環をつくり上げている一員であり、安心を約束された娯楽の心地よさはとてもよくわかる。それを批判するつもりはないし、する立場にもないけれど、ときにお定まりのお涙ちょうだいやハッピーエンドが嘘くさく思えてしまうのも、本当のことだ。

    そのなかにあって一穂ミチは、とても革新的かつ明晰な作家だと思っている。
    アマゾンでの評価が真っ二つに割れているのもよくわかる。この人の書く物語は、安心して楽しく読めるエンターテイメントじゃないからだ。時代の空気を捉えた軽妙な文体でもって、人間関係の本質を抉ってくる。
    「おもしろい」「おもしろくない」の二者択一では語りえない深さから、読む者の価値観や既成概念をゆさぶる(なーんて強烈な気負いはきっと本人にはなく、さらっと自然に、見たまま思ったままを描写しているだけ、みたいなところがまたすごいんだけど)。
    共感する人もいれば、反発する人もそりゃあいるだろう。だって、お約束を軽く飛び越えたところで書いてるもの。

    ボーイズラブはその名のとおり恋愛をテーマとすることが必須事項だ。
    恋愛におけるハッピーエンドの主たるものは当然両想いであり、愛し合う二人が末永く幸せに暮らすこと。この本は、まずタイトルで、そんな永遠なんて「おとぎ話」だと切って捨ててしまっている。

    来杉はまたいつか姿をくらますかもしれない。湊のまっすぐな愛情が耐え難く思える日が来るかもしれない。
    それでも、来杉は湊といっしょにいることを選んで、いっしょにいる。
    なにかの代償とか、愛されているからとかではなく、ただ来杉が湊を愛していて、湊も来杉を愛している。その結果として、ともにいる。それは約束でも運命でもない。
    ただ、自らが選び取った「いま」があるというだけだ。

    押し流されるままに生きてきた来杉にとって、「選び取った」ことこそが、奇跡のようなものだったのではないか。
    選び取った「いま」がこの先、幸福な思い出になるか、悲惨な結末を迎えるか、そんなことはわからない。関係ない。
    人にとっての希望とは、未明の明日を自らの意思で選び取ることができることだということを、一穂ミチは繰り返し、静かな情熱をこめて描いているように思う。
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