「いちばん遠い星」 秋平しろ

は〜、やっぱり両片想いっていいな!


大学時代、後輩の貝森からの告白を、嘘をついて断ってしまったカフェ店員の海老原。それでもあきらめずに自分に「好きだ」と言い続ける貝森に、いつしか海老原も惹かれているのだが、いまある穏やかな関係を壊す勇気がでないまま、ふたりの関係は宙に浮いたままでいる。

 

クールなようで根はすごくピュアな海老原も、天真爛漫な笑顔の奥にせつない想いを隠した貝森も、双方の一途な想いがせつなくて、読んでいるあいだずっときゅんきゅんしっぱなし。
はたから見れば、海老原は取るに足りないことで遠まわりしているだけ(身もふたもない)なんだけど、想いが深ければ深いほど、取るに足りないヒビすら大きな欠陥に思えてしまうものなのだろう。
どうでもいい相手なら、きっとこんなに思い悩んだりしない。好きだからこそ、相手にとって過不足ない恋人でありたいと願ってしまう。


不安にかられた海老原の迷走っぷりときたら、危なっかしくてたまらなかった。
セックスに失敗して初恋を失った海老原は、いまも好きな相手と身体の関係を持つことを恐れている。今度こそ失敗しないようにと藁をもすがる思いで出会い系を試すのだが、そこに現れたのはなんと、勤め先のカフェの常連客でもある高校時代の塾の先生。
ほんとうに先生には助演男優賞を贈りたい…!先生じゃなければきっと、とりかえしのつかないことになっていたはず。
ただの当て馬ではなく、先生自身の葛藤や人生もきちんと描かれていたのがとてもよかった。

どんな人間も矛盾を抱えて生きている。海老原の背中を押してくれたように、先生自身も幸せになってくれるといいな。

 

結局、最後まですることはできず、自暴自棄になったえびさんに、貝森は滅多にない乱暴な言葉で本音をぶちける。

ここの貝森にすっごく萌えました!!
いつも「お願い」の姿勢を崩さない年下ワンコがガチのタメ口になる瞬間って、たまらなく下剋上を感じてしまう。

クールなえびさんにあまえているように見えて、貝森はずっと、えびさんに頼られかったんだなぁ。それでもじっと我慢して、えびさんが自分で言葉にするまで待ってたんだなって、我慢強さにぐっときました。耐える攻め…それはプライスレス。

 

ずっと自分の内にある不安にとらわれていた海老原だけど、ただありのままの自分を差し出せばいいだった。貝森がほしかったのは、ほかでもない海老原自身だったのだから。

でも、好きな相手に、自分の嫌いな自分を晒してみせるのは、なにより勇気がいること。

だからこそ、ふたりが掴んだささやかな幸せは、夜空の星みたいにキラキラ輝いて見えるのだろう。

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    「バターミルクドナーズ」 赤星ジェイク

    すがすがしいくらいにばかばかしいエロ漫画。(褒め言葉)


    健全な男子(の精子)を育成するための組織が関与し、運営している日本男子体育大学、通称「日玉」。この大学は読んで字のごとく、優れた男の身体を育む大人の学校である。毎年選抜される優秀生徒にはベストフグリストの称号が与えられ、研究対象の報酬として時価数千万ともいわれる金の大玉が授与されるのだ!


    以上が、開始1ページ目で紹介される本作のあらすじ。
    この「フグリスト」という単語だけで、「あ、アホになって読むべきなんだな」と、こちらも万全の心構えができるというもの。なんてわかりやすく、親切な導入部なんだ。

     

    フグリストを目指して童貞を貫いてきた公成は、日玉浪人生の明のセックスを見て以来、性的なことへの興味が抑えられなくなる。興味本位のセックスで、すっかり公成に骨抜きにされてしまった明だが、公成にとって愛とセックスは別問題。金目的で不特定多数と関係を持っていたことを逆手に取られ、明は公成の肉体強化(という名のセフレ)に協力することになる。
    受けだけどめちゃくちゃ男前な公成と、攻めだけど受けも難なくこなす明。左右固定だけど、ふたりのあいだには限りなくリバーシブルな空気があって、そこがいい。

    明が昔の男にどろどろにされている現場を見せつけられ、臆するどころか、堂々と3Pに参加して寝とってしまう公成の男らしさたるや。

    襲い受けを超える、NTL受けの登場や!

     

    個人的には脇の、色黒柔道家フグリスト候補・飯田を翻弄する、初代フグリストの誘い受け・ミナミさんに萌えまくりでした。純情な若者を誘惑するいけないお兄さん、じつにたまりませんな。

     

    あらゆる倫理がぶっとんだ世界で「ふぁ!?」となることもしばしば。でも、つねに性癖全開で突っ走ってくところが赤星さんの漫画のおもしろさですよね。ドナーアイドルの射○会とか、一周して感心してしまったぜ…。

    細かいことは考えず、ダイナミックな濡れ場を堪能すべし。

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      「花恋つらね」 1 夏目イサク

      待ってましたのイサクさんの新シリーズは、歌舞伎BL。

       

      梨園を背負って立つ若手立役者・新井源介こと、野田淳平。イケメンと評判の若手女形・松川惣五郎こと、東周吾。同じ高校の芸能コースに通うふたりは、歌舞伎の名門の御曹司同士。

      同世代のなかでも頭ひとつ抜けた存在である源介に、惣五郎は強いライバル意識を抱いているのだが、源介はそんなことにはお構いなしで惣五郎になついてくる。

       

      とにかく源介には負けたくない惣五郎と、まだ幼いころに「ひと目惚れ」した惣五郎の「いちばん」になりたい源介。

      心の底では認め合っていても、まだまだふたりとも未熟な半人前。役者として自分の足りないところばかりが見えてしまって、素直になれない若さがもどかしくもかわいらしい。
      何よりふたりはこの先、何年、何十年もともに舞台で競い合う同志でもあるのだ。どれだけ意地を張っていても、源介といっしょに芝居をするのが惣五郎は楽しくてたまらなくなっていく。

       

      イサクさんは、ほんと惣五郎みたいな意地っ張り受けを描くのがうまいな〜。
      表面ではお高くとまってたくせに、ちょっと褒められただけで相手を信用してコロっといってしまう。この単純さ、愛さずにはいられない。笑
      惣五郎はきっと、家中みんなから可愛がられて育ったんだろうなぁ。だから、うまくいかないと自分を責めて凹んでしまうし、相手が喜んでくれれば、それだけでむくむく自信を取り戻すことができる。
      ライバルとはいっても、源介も惣五郎もとても心根が健やかで、相手に対してまっすぐ。脚を引っ張ってやろうとか、恥をかかせてやろうなんてこと、これっぽっちも思っていない。だから、見ているこちらも応援してあげたくなる。

      やっぱりイサクさんのライバルBLは素晴らしい!


      ふだんはまったく観る機会のない伝統芸能の世界だけど、漫画や小説にはたびたび描かれている題材。

      これを機に歌舞伎そのものにもちょっとふれてみたいなあ。「三人吉三」おもしろそうだったし。

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        「お前なんかいらないよ」 立野真琴

        恋愛は「楽しく」が信条のフラワーコーディネータ・晴樹。

        美貌を武器に、男女問わずあとくされのない関係をこなしてきた晴樹だったが、ただひとり、苦い別れを経験した相手がいた。
        恋人からの紹介でブライダルのコーディネートを請け負うこととなった晴樹は、その忘れられない相手・祥平と再会する。いまは互いに社会人同士、過去は忘れたふりをする晴樹だったが、祥平に婚約者がいると知り、かつての古傷がうずきはじめる。

         

        作者もあとがきで書いているとおり、ドロドロ三角関係BL。晴樹はいま流行りの「クズ受け」のはずだけど…トレンド感より古き良き昼ドラテイストが漂う。笑
        しかし、こういうベタなものを描いたときほど、ベテランの技が際立つ気がしますね。


        かつての恋人との再会→凌辱→痴情のもつれ→刃傷沙汰→病院で危篤状態と、お約束のシチュエーションをしっかり網羅しつつ、波乱万丈の末、最後はきっちり「愛はすべてを救う」なハッピーエンドで落とす。

        昼ドラのツボを完璧におさえたストーリーはのどごし抜群で、内容はドロドロであるにも関わらず、夏に食べる素麺みたいにすいすい読み進めることができました。


        数多の作品を世に送り出しながらまったく緩むことのない、これぞ大ベテランというべき仕事っぷり。

        画業30周年を迎えた作者の、職業作家としての到達点をかみしめる一冊。

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          「カラーレシピ」 1 はらだ

          技術はたしかだが無愛想で喧嘩っ早く、指名がつかないスタイリストの笑吉。ビラ配りの最中に暴言を吐いてきたムカつくイケメンを殴り倒したら、なんと相手は同じ店で働くことになる1個年上のスタイリスト・福介だった。
          腕より口のうまさで指名を集める福介は、生真面目な笑吉とは水と油。そのうえ、酔った福介の変態行為に付き合わされそうになり、笑吉のイライラは最高潮に。

          そんななか、笑吉の身の回りでは気味の悪いストーカー行為が頻発するようになる。数少ない常連客・鬼原から笑吉がアプローチを受けていたことを知った福介は、笑吉に気をつけろと忠告するが、嫌がらせはエスカレートしていく。


          ツンツンしてても根は素直な笑吉と、笑顔の裏で腹に一物抱えていそうな福介。

          水と油ということは、互いの長所で短所を補い合えるいいライバルでもあるわけだけど、はらださんの漫画なんだからどんなトラップが隠されているかわからない。

          意地悪かと思えば、やさしい言葉をささやく福介の本心がまったく読めなくて、笑吉といっしょに翻弄されっぱなし。
          この笑顔に騙されないぞ〜〜〜〜!!!と心して読んだにも関わらず、福介の飴と鞭と鬼原さんのキモチワルさがじつに巧妙で、まんまと手玉にとられてしまった。

          くそー、またしてもはらださんの思うツボだわ!

           

          本筋とは直接関係することのない、美容院の雑務やスタイリング技術についても、しっかり調べたうえで描かれているのがまた、ポイント高い。技術職でありながらサービス業である美容師さんたちの苦労がしのばれて、お仕事漫画としてもじゅうぶん楽しめます。

           

          一見、笑吉が罠に絡めとられたかのようだけど、不思議と後味は悪くないのは、笑吉がそう簡単には壊れそうもないからだろう。

          福介がこれほど笑吉に執着するのは、どうしたって笑吉が自分のものにはならないことを知っているからこそ。どれだけ他人に非情になろうがきっと、福介は笑吉が笑吉でなくなるようなことはできないんじゃないかと思うんだけど…その辺は第2巻いこうご期待!か。

           

          エピローグの掌編「鬼原さん」がまた、孤独な男に手向けられた一輪の花のようにすばらしい。

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            「ヤリチン☆ビッチ部」 1 おげれつたなか

            pixivで人気の、おバカでエロくて意外と純情な、新感覚男子校BLがコミックス化。
            WEBからたのしく読んでいたので、「このタイトルのまま本にはできないよね…!?」と思ってたら、そのまま本になっちゃいましたね。笑

             

            父の転勤で山奥の男子校・モリモーリ学園(なんつーネーミングセンスだ)に転校することとなった高校一年生の遠野。楽そうだからと入部を決めた写真部は、じつは「活動内容はセッ○ス」という無法地帯の通称「ヤリチン・ビッチ部」だった!?
            キャラの濃すぎる先輩たちに「一か月以内にセックスしないと輪○」を言い渡され、童貞の遠野は顔面蒼白。いっしょに入部した加島(童貞)と助け合い、貞操の危機を乗り越えるべく奮闘する。


            男子校・狙われる新入生・危険な先輩たち…というと、私のような年季の入った腐女子はつい、「禁断のギムナジウム」的なイメージを連想してしまうんですが、この漫画にそういう耽美な雰囲気は一切なし!

            いまどきのチャラくてイケてるDKが、元気ハツラツで性欲を発散させています。
            かといって、アホエロ一辺倒なのかといえば、そういうわけでもない。ヤリ部の先輩たちはみんな、貞操観念が壊れた人ばかりだけど、恋愛に関しては不器用で純情とすらいえる。

            「犯すぞ」が口癖なのに、気になる子の前では意地悪ばかり云ってしまう田村先輩や、ほんとうは恋人の明美部長以外とはしたくなさそうな糸目先輩。百合くんはふだんはあきらかにネジが一本外れちゃっているだけに、ふいに見せるまともな表情にドキっとさせられる。

            たなかさんの漫画はいつも、身体のゆるさと内面の純情さのさじ加減が絶妙だ。

            ヤることは同じでも、切なかったり、いちゃラブ全開だったり、かなしかったり。ハッピーエンドのご褒美だけじゃなく、いろんなエロがつまってるから胸やけしないんだろうな。

             

            また、主人公である遠野はいたってまっとうなピュア・ボーイなので(ちょっと人見知りなツッコミ気質)、先輩たちが半裸でバイブを振り回す中、新入生たちはこっちが気恥ずかしくなるくらい、初心で純情な三角関係を繰り広げているじゃありませんか!

            私はこの一年生組も大好きなんですよね〜〜〜!!

            天然イケメンな加島がほんとたまらない…!真正面から遠野に気持ちをぶつけていくひたむきさに、こっちまで胸が高鳴ります。やっぱり、短髪黒髪攻めはジャスティス!

             

            天使みたいに笑顔のかわいいクラスメイト・矢口に、遠野はアイドルへの憧のような好意を寄せている。

            しかし、どうやら矢口は、いとこの加島に特別な感情を抱いているらしい。そんななか、加島は輪○回避の言い訳として、先輩たちの前で「遠野と付き合ってます」宣言したうえ遠野キスを。

            鈍感すぎる遠野は加島の想いにちっとも気づく気配がないし、いっぽうの矢口ちゃんもただの天使ではなさそう。

            入り乱れるやじるしの行方から目が離せない!

             

            私自身、初見では露骨すぎるタイトルに軽く引いていたんですが(笑)、読んでみれば意外や意外、まっとうな青春BLじゃありませんか。これだけぶっとんだキャラクターが揃っているにも関わらず、学園ものならではの「ユートピア感」もきちんと備わっている。

            斬新であると同時に、王道。ついに学園BLのニューウェーブが登場したな、と感じます。

             

            第一印象でスルーしてしまってはもったいない。

            キラキラもエロエロも同時に摂取できる、めくるめく青春の味をご賞味あれ。

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              「BLT」 吉田ゆうこ

              ファンを笑顔にしたい、みんなに夢を与えたい、もっとたくさんのひとから愛されたい。
              ただ見捨てられたくない一心で、大人に身体を売ったアイドルグループ「BLT」の一員・浩輔。

              こんなこと、なんてことない。そう思っていたはずなのに、いつまでも純粋なままアイドルでありつづけるメンバー・みさきの笑顔に、苛立ちが抑えられなくなっていく。

               

              アイドル戦国時代ともいえるオタク業界の傾向を受けて、BL界でもアイドルものや芸能ものが増えましたね。

              イケメン百花繚乱の明るくハッピーなものもいいですが、この「BLT」はスポットライトの陰を描く、じつに吉田さんらしい業界残酷物語。純粋だった子どもらが、夢を叶えるために自分の身を犠牲にしていく姿がなんとも痛ましい。

              しかし、欲望と欺瞞に満ちた泥のなかだからこそ、無垢な輝きはいっそう際立つ。

              浩輔が傷つくほどにみさきがアイドルとして研ぎ澄まされていくのが、皮肉でうつくしい。

               

              ふたりの出した結論は、身勝手で、プロとしてはゆるされないものかもしれない。それでもほんとうはみさきがいうとおり、「アイドルで一番になる」のと同じくらい、「ふつうの人としてしあわせ」になるのは大変なことなんだろう。

              だとしたら、自分の理想のためじゃなく、誰よりも大切にしたい人のために人生を選ぶのも、全然ありだよね。

               

              見たこともない「愛」や「夢」を唄いながら、「みんな」のものでありつづけるってことは、やはり心のどこかがずっと孤独なのかもしれない。誰かに愛されたい一心で、自分の幸せを見失った浩輔だけど、今度はたったひとりを愛することで幸せになれたらいい。

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                「おやすみのキスはしないで」 市村奈央

                これまで攻めに事後の世話を焼いてもらう受けは何度も読んできたけれど、受けに後始末してもらう攻めははじめてだよ…!斬新!

                市村さんの書くキャラは、受けも攻めもとにかくかわいい。
                この本の受け・わかばもとってもかわいかった〜!魔性なんてなまやさしいものじゃありません。セックスで攻めの精気を吸って生きる正真正銘の「淫魔」。
                だけど、当のわかばはそういう己のあさましさを嫌悪していて、妹が不眠症のわかばのために雇った添い寝屋の大学生・諒介に、自分を「拘束してほしい」と持ちかける。

                無邪気で好奇心旺盛なふだんのわかばと、淫魔の本性をみせたときのなまめかしさのギャップにノックアウトされてしまった。淫魔だけにちっとも受け身なんかじゃなく、自分からぐいぐい迫っていく襲いっぷりもすばらしい。
                その精力たるや、攻めの諒介のほうが先に搾り取られて、わかばに後始末されてしまうほど。
                面倒をみられて決まりの悪そうな諒介がまたかわいいんだ。

                いくらでもエロコメにできるネタを仕込みながらも、ふたりとも根は純情で、そして恋に真面目。
                わかばは淫魔くせにチャームで誰かを誘惑することをよしとせず、諒介はわかばのチャームに惑わされているんじゃないことを証明するために、ひとつ布団のなかで必死で手を出さないように我慢する。
                ただ気持ちいいことに流されてしまうのではなく、いっしょに幸せになろうと努力する。
                こういう不器用な健気さが、とってもかわいい。
                 

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                  「ケンジとシロさん」 1 大沢家政婦協会

                  通販したと思ったらポチりそこねてて、慌てて再販をゲットしたご本家による「きのう何食べた?」同人誌の感想です。
                  委託先の通販サイトどころか、コミックナタリーでも記事が出されていたくらいなので、出版社側もお目こぼし案件なのか?とは思うんだけど、この作品をBLとして読んでいらっしゃらない方もいると思うので。

                  念のため、感想は折りたたみ。
                   

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                    「しあわせのはなし」 歩田川和果

                    「ねくたいや」スピンオフの長男編。

                    ネクタイ屋の跡取りである佳久と、彼に人生の五分の四片想いしている幼なじみの環。高校生のときにはじめて佳久に告白して以来、3回告白して3回フラれながらも、環はずっと佳久に恋したまま。それでも、かつて佳久を手ひどく傷つけた後悔から、あと一歩が踏み出せずにいる。

                    いやー、相変わらず面倒な男たちが自分ルールに縛られて、面倒な恋してる話なんですが。
                    佳久も環も、惚れたはれたに周囲まで巻き込んで、何年もすったもんだしてるろくでもない大人たち。それでも好きだというなら、個人の責任の範疇でやってくれという考え方なので、ふたりが互いに傷つけあってる分には、いいぞもっとやれ、という気持ち。
                    それなのに今回モヤモヤしてしまったのは、もっともらしくそこに口を挟んでくる外野の存在。

                    佳久の弟たちは、環が佳久の気持ちをないがしろにしたんだから、佳久が逆上したのはもっともだと言わんばかりの口ぶり。
                    でも、佳久だっていい大人だろ…痴情のもつれに刃物を持ち出すなんて正当化されていいはずがない。
                    息子同然の環に男が好きでもかまわないと伝えた口で、店を守るため、外に妾をつくれといわんばかりの老テーラーもなんだか不気味。もっともそうに話しているけど、女を産む機械と思っているといわれても仕方ない言い分だ。
                    ほんとうに家の事情も環の佳久への想いもすべて受け入れてくれる女性がいたとして、生まれてきた子どもは「環の子ども」ということにはならないはず。なにより、その女性自身の子どもでもあるのだから。

                    本人たちはまったく悪意なく、あくまで「愛」ゆえの言葉だからこそよけいに厄介だ。
                    なんというか、みんながみんな、情が濃すぎるんだよな。
                    自分が愛するものを守るためなら、誰かが傷つけることもいとわない。歩田川さんの描く恋は、いつだってそういうエゴとエゴのぶつかり合いだな。
                    純粋すぎるまっすぐな愛情に、ときに私はひるんでしまう。

                    でも、周りがなんといったところで、自分をしあわせにしてやれるのは自分しかいない。結局のところ、自分の気持ちに素直でいることが、しあわせへのいちばんの近道かもしれない。

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