「GIANT KILLING」 18‐22 ツジトモ

リーグ後半戦が開幕!
チーム力がものを言う後半戦、ETUが目指すフットボールは「チーム一丸」。
ETUの選手たちの強みは、長年辛酸をなめてきたがゆえの成長への貪欲さ。その伸びしろを最大限に引き出すため、ライバルの上達を歓迎し、ピッチで戦う選手も、ベンチメンバーも、自分なりにできることをやる。そうやって、チーム全体の力を底上げする。
これは達海への信頼と、前半戦を戦ってついた自信があるからこそできる戦い方。「監督はちゃんと見てくれている」。そう信じられるからこそ、チーム内に健全な競争状態がうまれていく。

自分たちの「強み」と「選手間の共通認識」を見直した夏キャンプを経て挑んだ、後半戦緒戦。
ETUは札幌に3-1で勝利。悪天候のなか地力が問われる神戸戦でも1-1と、前半戦から6戦無敗の上々のスタートを切る。

そうして迎えた、モンテビア山形戦。モンテビアは前半戦でも意外な苦戦を強いられた相手。
山形の佐倉監督は達海と同い年の若手監督ながら、その経歴は、プロとしての選手経験は一切ない事務職上がりという異色のもの。達海のプレーに憧れ、いちどはあきらめた夢を取り戻した佐倉の回想録には、深いサッカーへの愛とリスペクトが込められていて胸が熱くなりました。選手として一流にはなれなかったからこそ、見えるもの、できることもあるのかもしれない。
人柄や経歴は対照的でも、サッカー観という点においてはどこか通じ合うもののあるふたり。今後、達海の「好敵手」となることが予感される相手です。
両チームとも、置かれている状況は似通っている。
低予算の弱小クラブ。その下馬評を覆しての現在中位(ETUは11位)。どちらが先に抜け出して、上位争いに食い込むか。
この試合をものにできるかどうかが今後の浮沈を占う。
お互いに敵の裏をかくことに快感を感じる、あなどれない相手であることは百も承知。
佐倉は憧れの存在だった達海を今度こそ超えるべく、そして達海は前半戦で感じた「やりづらさ」の正体を暴くべく、万全の状態で決戦に挑む。

山形の持ち味は2部上がりのチームらしく、全員守備から一瞬のチャンスをものにする堅守速攻。
ETU戦でも、序盤の猛攻に動じることなく、並外れた集中力でピンチを防ぎきる。選手たちのプレーの迷いのなさ。それは、監督への信頼の証。
いつもどおりの山形の形。ETUはボールを持たされているに過ぎない。試合は山形のペース。
誰もがそう思ったとき、待ってましたとばかりにETUが先制点をあげる。

ぎゃー!こういうこと、あるよな〜〜〜!!!
守り切って得ていたはずの優位が、1点によって形勢逆転する。
達海のいうとおり、得点しなければけして勝利することはできない。この1点によって、山形は堅守速攻のスタイルを捨て、攻勢に転じることを余儀なくされる。

順調に試合を運んでいるつもりで、ETUの術中にハマっていた山形。
流れを取り返すべく、佐倉監督は新戦術に打ってでる。
これまでの守備的なスタイルを覆す、MF・小森のパスセンスを生かした攻撃的スタイル。強豪のひしめく1部リーグで生き抜くべく、佐倉はリスクを負ってチャレンジすることを選ぶ。
しかし、この決死のチャレンジすらも、達海のプランのうちだった。
達海のこのしたたかさときたら!まるで佐倉が主人公で、達海のほうが悪役のよう。ほんっと、食えない男だな〜。
達海との実力の差を痛感させられながらも、自分を信じてついてきてくれる選手たちのため、佐倉は自らを奮い立たせる。

中二日のアウェイ戦に挑むETUと、中三日でホーム戦を戦う山形。
時間が経つにつれて現れる、埋めがたいコンディションの差。苦し紛れのファールで堀田が退場し、ETUに乱れが生じた一瞬の隙。その一瞬のチャンスを、山形の選手たちは抜群の集中力で引き寄せた。
決めたのはやはりこの人、日本サッカー界の至宝・ケン様!
ゴールを決めて仲間を称えるケン様、かっこよすぎる〜〜〜〜!!!これは監督も惚れてしまいますわ。

1-1の同点。しかし、一転して、数的不利の劣勢に立たされたETU。
状況を打開すべく、達海は新戦力・殿山を投入。しかし、1人足りない穴を埋めるばかりで、なかなかETUは攻め込もうとしない。一方山形は、高さのあるFWを投入し、カウンターを狙う。
こう着状態がつづくなか、さきに最後のカードを切ったのは達海。もうひとりの新戦力・ガブリエルを投入し、一気に攻撃に転じる。
残り10分の攻防は、両者譲らぬ息詰まる展開!互いに体力は限界。残るは、意地と意地のぶつかり合い。
散々やり合ったメンデスとの一騎打ちに勝って、夏木がPKゲットしたシーンにはシビれました。単なる試合中の小競り合いだと思っていたのは、すべてここに至る駆け引きだったのかと。
そして、夏木に託されたPKを華麗に決めてみせたジーノ。
もう、ジーノが蹴るってだけで、まったく外れる気がしない。彼がかっこう悪い展開なんて、想像できない。笑
このふたりの関係、じつにいいですね〜。いつもスカしてるジーノだけど、同い年の夏木にだけは、等身大の姿でやり合っているような気がして。ジーノ相手に切り込んでいくには、夏木くらいの単純バカじゃなきゃダメだろうな。

新戦力の活躍と我慢強く達海のプランを実行したチームのまとまりで、山形戦の勝利を収めたETU。
つぎなる相手は、前半戦苦杯をなめさせられた川崎フロンティア。
援助を打ち切らんとするスポンサー様の観戦も決定し、絶対に負けられない戦いが始まる…!


中断期間が明けてアツい試合展開がつづくなかでも、キーパーたちの見えざるレギュラー争いや、自転車操業の低予算クラブを率いる監督の苦労など、陰の功労者たちにもきちんと光を当ててくれるところがいい。ほんとうにJリーグ愛にあふれた漫画だなぁと。
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    「GIANT KILLING」 14-17 ツジトモ

    リーグの中断期間を迎えたETU。
    しかし、試合がないからといって、ゆっくりお休みというわけにはいかない。
    中断期間にしなければいけないことといえば、ファンサービスにスポンサー様へのご挨拶。そして、リーグ後半戦を乗り切るための戦力強化。前半戦は意外性で勝負することができても、後半戦になればきっちり分析され、対策される。
    既存のメンバーを鍛え上げることはもちろん、あらたな戦力補強も必要になる。
    サポーターたちが注目する、移籍市場が幕を開けます。

    ETUからも、SBの石浜が甲府へ移籍。成績次第では、選手のみならず監督の解任もあるこの季節。
    ETUの再建という重責を担う達海は、全員が自分の足で立つチームを作るべく、ETU強化部の「旅人」こと笠野を探しに出かける。
    笠野はかつて、ETUのエースだった達海の海外移籍を実現させた人物だった。
    因縁のひととの再会によって、ついに達海の選手時代の思い出があかされる。

    いまとかわらず、ひとを食ったような物言いと、才気あふれるプレーでサッカーファンを魅了していた選手時代の達海。その圧倒的な輝きは、純粋なサッカーファンのみならず、彼をつかって稼ぎたい人間たちをも引き寄せた。
    当時から、ETUは弱小クラブ。
    それでも、熱意をもったフロントや指導者、そして生え抜きの選手たちの活躍によって、地域と一体になって成長していた。しかし、クラブも企業である以上、金を生み出すことが大事と考える会長と、育成を重んじるチームの方向性は徐々に食い違っていく。
    サッカーができればそれでいい達海と、スターとして達海を売り出そうとする会長。
    選手にとってはプレーがいちばん。でも、サッカーをするためには、お金がなくては立ち行かない。どちらも間違ったことを言ってるわけではない。それがわかっていたからこそ、達海も期待に応えようとした。

    お金をもらってプロとしてサッカーをする以上、しがらみは当然生まれる。
    それでも達海にとって重要なことは、選手時代から変わらず、「楽しむ」ことだった。つまらない常識なんてはねのけて、逆境を、ピンチを、追い込まれた状況こそを楽しめ。
    そういう達海のスピリットこそが、スタジアムを沸き上がらせてきた。
    達海は眼を瞠るスピードで進化を遂げ、次期代表エースと目されるまでに成長する。しかし、酷使された達海の身体はボロボロだった。

    両足を負傷して、代表招集を辞退した達海が後藤ともんじゃを食べるシーン、いいなぁ。
    達海は選手時代から後藤にタメ口だったんだな…。後藤さん、しょっちゅう東京に来てるんですか。そうですか。
    焦りやもどかしさで張りつめていた達海が、後藤と話すうちにすっかりやわらかい顔をしていて、戦友の存在ってやっぱりデカいなぁと思う。同じ痛みを知ってる人間じゃなけりゃ、こういう弱音は吐けないよね。
    後藤といるときの達海はほんとツンデレだわ…!

    チームが盛り上がるなかでの、エースの長期離脱。加熱していくサポーター。苛立つチームメイト。イングランドからのオファーの噂。そして、治らない脚。
    達海が揺らした人々の心。その揺れは伝播して、やがて大きな波紋を呼ぶ。
    加熱していく状況に応じるため、会長は怪我の治りきらない達海をベンチ入りさせるように命じた。サッカーを楽しまない達海なんて、達海ではない。そう感じた笠野は覚悟を決める。
     

    俺はここで このクラブの幹になるよ
    お前は このクラブの太陽になれ 達海


    そうして達海はETUを去り、イングランドのプレミアリーグへと移籍した。
    しかし、達海の肉体も、クラブの状況も、もはやどうしようもないところまで来てしまっていた。
    達海はプレミアデビュー戦の負傷によって現役引退。
    ETUもまた、2部へ降格。GBだった笠野は、その責任をとって辞任したのだった。
    うーん、思った以上に、達海のプレミアでの選手生活は残酷なものだったんですね。その後、どうやって彼が下部チームの監督になったのかも気になる。

    かつてETUの太陽として希望を託した男が、監督として帰って来た。これは笠野さんだって、過去を憂えてばかりはいられない。
    クラブを支える屋台骨となるひとが帰って来てたところで、ついにETUも本格始動!
    もちろん、夏のキャンプも地元・東京です!!

    目隠ししてスイカ割りならぬゴール割りや、ポジションをシャッフルしての大学生との練習試合。
    相変わらず、何をさせたいのかわからないメニューながら、目指すところは「強みを生かしたプレー」そして、「選手同士の共通認識」を育むこと。強豪相手に後半戦、どこまでやれるかはそのふたつにかかってくる。
    ブラジル人SBのガブリエルと、影が薄すぎるMF・殿山さんというあたらしいチームメイトも加わって、さらにハングリーさが増したETU。

    クラブの中心にいるのは、あくまで選手たち。彼らのポテンシャルを最大に引き出すことこそが、クラブの成長につながっていく。
    原点に立ち返ったETUの下剋上はなるか。リーグ後半戦が幕を開ける。
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      「六の宮の姫君」 北村薫

      2009年に北村薫氏が直木賞を受賞した際に書いた記事です。
      納得いかなかったらしく下書きに放り込んでたのですが、読み返したら「完成してるじゃん!」と思ったので6年越しであげてみる。二次に浸かっているいまだからこそ、うなずくところもあったりして。感想という皮をかぶった私的やおい考です。

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      北村薫「鷺と雪」が直木賞を受賞した。北村先生、おめでとうございます!

      「名探偵コナン」や「金田一少年の事件簿」の影響から「探偵なんて死神と同じ」と若者らしい穿った目でミステリーを遠ざけていた私にとって、「空飛ぶ馬」との出会いはちょっとした事件でした。日常に紛れ込むふとした違和感を謎へ変貌させる鮮やかな推理。殺人がなくてもミステリーは書けるんだ!とシリーズ5冊をがつがつ読んだ。
      学校の図書室で手に取ったころには正直、「面白いけど、とにかく地味。」くらいに思っていたのに、「円紫さんと私シリーズ」は人生の節目ごとに読み返す作品となった。感動した本、涙させられた本というのは山ほどある。でも、自分が齢を重ねる間もずっと寄り添ってくれる本に出会えることは、ちょっとした運命に等しい。

      めでたさに乗じて、心の殿堂入り作品である「六の宮の姫君」の話をしたい。
      未読の方はどうぞ、引き返してまっさらのまま読んでください。なんたって、ミステリーなんだもの!胸震える謎解きが貴方を待っています。

      あらすじ(裏表紙より引用)

      最終学年を迎えた≪私≫は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信一全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。≪あれは玉突きだね。……いや、キャッチボールだ≫――王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、≪私≫の探偵が始まった……。


      本書は実在する短編小説、芥川龍之介「六の宮の姫君」が書かれた意図を巡る書誌ミステリー。
      つまり、この謎は物語世界だけの架空のものでなく、実在する謎でもある。
      さあ、ぞくぞくしてきませんか?私たちが自分の手で探ることのできるミステリーなのです。
      積み重なる時間に埋もれてしまった真実の断片を、記録と記憶の集積たる書物の山から浚い出し、つなぎ合わせる。≪私≫の時をかける旅に、本好きの血が騒がずにはいられなかった。

      私がこの作品を愛してやまないのは、この本の主人公である≪私≫といういち読者によって、遠い過去にほどけた芥川と菊池、ふたりの親友同士の絆が縒り合わされるていくところにある。
      「六の宮の姫君」は短編小説の出自を探るミステリーであると同時に、ふたりの天才の友情と相克を紐解く物語でもあるのだ。
      現代人の孤独を射抜く作品群を残し、「将来に対するぼんやりとした不安」の果てに自死という最期を選んだ芥川龍之介。大衆のための文学を貫き通し、文芸春秋の主宰者として文壇における絶対的な地位を得た菊池寛。大正という時代の寵児であった彼らは、それぞれに云いえぬ孤独を抱えていた。
      芥川はさておき、菊池寛には「文壇の大御所」という印象しか持っていなかった。それだけに、「六の宮の姫君」のなかで語られる、彼が栄光の陰で求めた「誰にも見えない生活」の昏さに圧倒された。
      芥川と菊池は、互いがうちに秘めたその孤独の深さから、知らずひかれあったのかもしれない。
      尋常じゃない神経症の芥川と、故郷でも評判の粗忽物であったという菊池。その人柄はまさしく好対照だ。しかし彼らは「書くこと」という一点によって、深く結ばれた親友だった。
      芥川の息子“比呂志”の由来。「私の英雄」。≪芥川龍之介 交友十年、後事を託すべし≫。『ヂヤールの思出』。
      同じ地平で闘う存在があるという事実は、二人の孤独な魂をどれほど慰めたことだろう。各章の終わりにそっと投げ出される若かりし日のふたりのエピソードは、残像のように心に焼きついた。
       

      人は、それぞれ許せないことを持つ。


      菊池の「顎縊り上人」をうけて、芥川は「六の宮の姫君」を著すことになる。
      解説にて佐藤夕子が書いている通り、人間とは他人と相容れることのできない生き物だ。芥川と菊池は、「書くこと」によって互いの最良の理解者となった。また同時に、「書くこと」によって、互いの間に横たわる深い谷を確認することとなる。

      ≪私≫は言う。
       

      何事かを追求するのは、人である証に違いない。


      そうだとすれば、人であることは、決して尊いことばかりではないのだろう。
      己の理想を追い求めるがゆえに、菊池と芥川は道を別った。
      しかし、失われてしまったこの絆を読者の眼前に蘇らせたのもまた、≪私≫による「人である証」である。

      読者は物語に関与することはできない。それでも、私たちが読むことでのみ、距離を超え、時間を超え、かつて確かに存在したものが再生する。死から逃れられない人間にとって、この再生は永遠に触れる数少ない希望ではないか。
      もはや残骸ともいえる真実を手にした≪私≫が、物語の最期に切り取った芥川と菊池二人の「人生の輝きに満ちた春」。
      人たることの深い業に打ちのめされながらも、この光の前で私たちは、希望することをあきらめずにいられないのだ。

      ……以上、北村薫氏に敬意を表し、できる限り真面目に書きました。以下は私の不治の病がなせる妄言である。


      ―――――
       

      つまり私は、「菊池と芥川の関係性を追う≪私≫」という構図に、おおこりゃ、やおいの愛と深いところで通じるなあ!と感激したのです。≪私≫が抱く、ふたりの孤独への共感。時間と距離を隔てた第三者であるからこそ、両者の関係性に深く切り込んでゆく言葉。
       

      「震災前には、芥川も菊池も若かったのですね。若い二人の天才だったのですね」


      やおいと一口にいっても、それを求める人の心はさまざまだと思いますが、私が男同士のあいだにやおいを透かし見てしまうのには、「この孤独な魂にせめて、道連れを与えてやりたい」という願いがある。
      もちろん、≪私≫はちっとも腐ったところのないお嬢さんなので、菊池と芥川の友情に疑いなど持ちません。
      それでもこの物語の結びに、両者の友情に一点の曇りもなかったころのひとコマを切り取った≪私≫の「想い」は、私がやおいに託す願いと同じもののような気がしてしかたないのです。

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        「GIANT KILLING」 10-13 ツジトモ

        複数巻ずつレビューしているとどの巻の書影を表示させるか迷う。
        10巻のカレーを食べる達海や、試合の臨場感あふれる構図の11巻も捨てがたかったのだけど、やはり今回は持田の不敵な笑みしかないだろうと。このラスボス感、ハンパじゃない。

        ―――――

        リーグ戦を戦ううえで、どのチームも頭を悩ませられるのが「ターンオーバー」。
        中2,3日の連戦が続けば、当然選手たちは疲弊する。けが人や代表招集される選手も出てくる。スタメンを固定したままでは、長丁場のリーグを戦い抜くことはできない。

        ETUからも赤崎が代表招集をうけ、警告や負傷でベンチ入りを余儀なくされるレギュラーが出てくる。
        リーグ首位を倒してなんとかうまく回り始めた歯車を止めないため、達海が提案したのは、チーム総出での「カレー・パーティー」。選手、フロント、サポーター、地域の人びと。クラブに係わるすべての人が同じ方向を向いて、同じ気持ちで戦う。そのためにいちばん有効なのは、みんないっしょになって、ひとつの経験を共有すること。
        もちろん、経費は後藤GMのポケットマネーで!
        そして、このカレー・パーティーに貢献したベンチメンバーたちこそが、主力を欠いた状態で迎える川崎戦で活躍を見せる。

        育成型のネルソン監督が率いる、若さあふれる川崎フロンティア。
        対するETUは、経験で勝るベテランメンバーを起用した布陣で迎え撃つ。
        雨をものともせず攻め上がる川崎。先制点を喫したETUは圧倒されるばかりかと思われたが、後半、コンディション不良のピッチでベテラン陣の経験値がものをいう。
        雨をものともしない堀田の技術力。ぴたりと勝負どころを見極めた石神の戦術眼。そして、不気味なほどの冷静さでゴールを狙いつづけた堺。「俺が俺が」の若手をしり目に虎視眈々とチャンスを狙い、一瞬の隙を逃さずとどめを刺す。さすがベテラン、とうなってしまう仕事人っぷりが、大きな1点をたたき出す。
        敗れはしたものの、川崎戦はETUの地力が底上げされていることを実感させる試合となった。

        リーグ前半戦も残り2試合。(今年からリーグは2部制ですが、GKの世界は1部制のまま。中断期間を挟んで後半戦スタート。)
        前半戦の集大成を見せるべき大一番で、ETUは宿敵・東京Vとのアウェイ戦を迎える。

        エース・持田を故障で欠いて、王者らしからぬ戦いを見せてきた東京V。
        しかし、前半戦初のベンチ入りを果たした持田が、王者のプライドに火をつける。

        弱小チームのETUにしてみれば、これまでの対戦だってみーんな格上だったわけですが、この東京V・持田のラスボス感はやはり、他と一線を画しています。
        この人の勝利への執念は、もはや「狂気」に等しい。
        まるで生死をかけた戦いに臨むかのような鬼気迫る表情、味方すら威圧する圧倒的な存在感。まさしく王者の風格に、ETUのメンバーはリードを奪いながらも気おされてしまう。

        持田の凄みは、目的がまったくブレないところにある。
        すべてのプレーが「点を取る」ことに集約されていて、無駄がない。それでいて、勝つために手段は選ばない。スタイルや個人の得点にこだわることなく、つねにベストな方法でチームが「勝利」することを考えている。
        GKを読んでいて実感するのは、チームの強さを引き出すのは選手ひとりひとりの「メンタリティ」であるということ。選手の中に迷いや疑いがあれば、チームが真の力を発揮することはできない。
        持田のようなとびきりのモチベーターがいれば、そりゃあ周りの選手も奮起せずにはいられないはず。それこそが彼が「王様」たるゆえんだろう。
        彼の言葉には、仲間をともに崖っぷちに立たせてしまうだけの魔力がある。
        その魔力は、対戦相手の椿にも伝染した。彼もまた、崖っぷちでこそ輝く男なのだ。

        プレシーズンマッチにつづき、ダービーマッチは痛み分け。
        内容で圧倒され、格のちがいを見せつけられたETU。
        求め続けた「王者のサッカー」への足掛かりをつかんだ東京V。
        引き分けといえど、両者が手にしたのは天と地ほどに異なる結果。中断期間を前にして、選手たちには重い課題が残された。


        13巻後半は、東京V戦後の重々しさを吹き飛ばす、ゆかいなオールスター戦!
        達海コーチ率いる日本人選抜vsダルファー率いる外国人選抜。
        個性的なメンツが勢ぞろいのなか、しっかり美味しいところをかっさらうケンさまはさすが!モデルはあきらかに、かの有名なキングですね。顔がもうそっくり。笑

        そして気にかかるのは、大団円に終わった花試合よりも、試合後の平泉監督と達海の「ここだけの話」。
        持田のあの鬼気迫るプレーは、彼が膝に大きな爆弾を抱えているからこそだったということ。達海自身もまた、怪我によって選手生命を断たれたらしいこと。
        若くして監督になったということは、当然、若くして選手生活を終えなければならなかったということにちがいない。
        自らについては多くを語らない達海の過去が、少しずつ明かされていく。


        選手の故障については、ほんとうに考えさせられる。
        選手生命は永遠じゃない。一試合一試合が、選手にとっては「勝負」の舞台。少しでも長くピークを維持し、悔いなくプレーするためにはどうすればいいのか。スポーツを観戦していると、「もう無理すんな」といいたくなる場面が何度もある。
        それでも選手たちはプロで、そこで無理をしなければ、勝負にうってでなければ、あっけなくチャンスは零れ落ちてしまう。そのチャンスをつかむために、彼らはギリギリのところで踏ん張りつづけている。目に見えるピンチ以外にも、つねにいちかばちかのトライアンドエラーを繰り返しているのだろう。
        ただ見守るしかない立場である以上、選手自身の選んだ道を応援するだけだけど、できるなら少しでも悔いのない選手生活を過ごせるようにと、願わずにいられない。
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          「GIANT KILLING」 5-9 ツジトモ・綱本将也

          開幕5連敗。まさしく背水の陣で、ブラジル人トリオ擁する名古屋グランパレス戦とのアウェイ戦を迎えたETU。
          勝利は絶望的かと思えたが、ふつふつと蓄えられてきた選手たちのモチベーションと、達海の戦術眼がついにかみ合う。黒田や椿の活躍で、見事2-0で名古屋を撃破。待望の勝ち点3を獲得する。
          長いトンネルのなかで、ひそかに5圓眤僚鼎鮓困蕕靴討い晋綟GMに涙…。たいした苦労人だよ、後藤さん。

          反撃の狼煙をあげたETU。
          それぞれが自信と目的意識を深めて課題に向き合うなか、チーム内での競争もはげしくなっていく。

          6巻のFWたちのポジション争いは、GKのなかでも大好きなエピソード。
          テクニック皆無にかかわらず、抜群の得点感覚でエースを張る夏木。夏木の復帰に焦りを覚える若手のちびっこ・世良。最年長の31歳ながら、虎視眈々と出場機会をうかがうクールな仕事人・堺。
          三者三様のFWが、切磋琢磨しながらひとつのポジションを奪い合う。チームメイトとしてのリスペクトはあっても、なれ合いなどまるでない戦いっぷり。それぞれに「良さ」があって、みんな応援せずにいられない。
          これから、というときに捻挫してしまって凹む世良に、ぶっきらぼうながらも先輩ならではの励ましの言葉をかける堺さんがかっこよすぎます!「ボールはしぶとく諦めない奴の前に転がってくる」。こんな台詞、自分よりずっと長い間あきらめずにやってきた先輩に言われてしまったら、奮い立たないわけにいかないでしょう。歳の話になると、ちょっと照れくさそうなところがまたかわいくって、ほんとうに堺さん反則。

          このまま昇り調子にいくかと思ったETUだったが、連勝のあとはなんと4戦連続引き分け。
          はたしてチームは強くなっているのか。自分たちの強さが見えづらい状況に、選手たちの表情もまちまち。それでも、チームがひとつしかない以上、お互いの想いをぶつけ合うしか前へ進む方法はない。
          ギクシャクしているようで、しっかり本音をぶつけ合えている選手たちの姿に達海は「勝利への意欲」を感じ取る。

          次なる相手は無敗で首位独走中の大阪ガンナーズ。
          日本代表のブラン監督も訪れる御前試合で、華麗な超攻撃的サッカーを誇るダルファー監督に土をつけてやろうと、達海のジャイキリ魂に火がついた。
          己のスタイルを貫いて勝利することを確信しているかのようなダルファーの威圧感。そんなダルファーの自信すら、自分たちの仙術の一部にしてしまおうとする達海のしたたかさ。試合まえから、ぞくぞくする戦いが始まっている。

          代表クラスの選手を多数そろえる大阪相手に、ETUはなかなか抑えどころを見極められない。
          振り回されるままに、思惑通りに先制点、そして追加点までを決められてしまう。
          まるでジャイキリ版「黒子」のような大阪の窪田くん。椿と似た、ふしぎなおもしろさがある選手ですね。目立たないのに気づけば最高のポジションにいて、決定的なチャンスを演出する。もともとMFだったのが、1.5列目に上がって開花したという来歴には、香川を彷彿とさせるものがあるような。

          前半終わって2-0。
          ハーフタイムに達海が出した指示はただひとつ。「試合を楽しめ」。
          バカのひとつ覚えかよ!!とツッコミながらも、選手たちは徐々に、強い相手との対戦に手ごたえを感じ始める。これまでにないレベルの高い戦いのなかで、選手たちは精神的にも成長していく。
          黒田のアツさに目を覚まされた杉江、同い年の窪田の活躍に奮起した椿、夏木はついに点取り屋としての欲を取り戻す。そうしてついに、ETUに得点が生まれる。1点返して2-1。ついに息を吹き返したETU。その中核にいたのはやはりこの人、華麗なる司令塔・ジーノだった。

          少しずつ、しかし確実に、ETUは王者の牙城を削り取っていく。
          真綿で首を絞めるような戦術に、達海の性格が表れていますね!ただ勝つのではなく、ダルファーがなによりこだわっている「自分たちのスタイル」を崩して勝利する。ダルファーのベンチワークこそが、達海の作戦の矛先。
          まるで嫌がらせのような戦術じゃないかw ほんと、敵に回したくない男だ。

          大阪ベンチの混乱に乗じて、なんとか同点まで持ち込んだETU。
          そしてこの日、チームに4戦ぶりの勝利をもたらしたのは、なんと世良!うわーん、これは感動!!
          ボロッボロの世良をくさしながらも、危険を顧みず飛び込んだFWとしての自覚は認める、といってくれた堺さんの背中にも感動…。6巻のFW争いが、ここに帰結するわけですね。

          ETU、見事な大金星!!!
          大阪戦では、世良に赤崎、椿と若手たちが活躍したわけですが、彼らには「日本代表」という大きな夢がある。
          9巻の大阪戦後には、のちのヒーローとなるであろう椿の生い立ちにまつわるエピソードも収録。山奥の寒村で、村の人たちに支えられてサッカーをつづけてきた椿。一風変わった来歴から、彼にとってのサッカーは人との絆の象徴だったことが伝わってくる。
          やはり椿はこの漫画のキーマンのひとりとなるよう。
          達海のもとで、彼がどんな成長を遂げていくのか楽しみです。
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            「ワールドトリガー」 10 葦原大介

            ワートリ最新刊まで読了。いや〜おもしろかった。
            三門市に突如現れた、「近界民(ネイバー)」と呼ばれる敵を倒すべく設立された防衛機関「ボーダー」。ボーダーの隊員である修はネイバーの少年・遊真、幼なじみのチカとともに、それぞれの目的を果たすため、ネイバーに立ち向かう。
            ただ相手を倒すだけがすべてではない、戦いにおける「駆け引き」がしっかり描かれていて読み応えがある。

            ワンピースという生ける伝説的なヒット作の影響もあり、キャラクターのエモーションがドラマをけん引する作品が大多数を占めるジャンプにおいて、ワールドトリガーはあえておおげさな感情表現を控えているように思える。
            たとえば、主人公のひとりである遊真の父親が、遊真を守って死ぬ場面。
            いくらでも悲劇的に盛り上げられたであろうこの回想シーンにおいて、遊真の感情の発露は描かれない。
            遊真はこれまでの生い立ちもあいまって、非常に合理的かつ現実的な思考をもつキャラクターであるが、作者はあえて彼の「涙」を描くことを避けているようにも思える。このことがまた、もはやひととしての身体を失ってしまっている遊真の存在をいっそう謎めいた、魅力的なものにしている。
            わからないからこそ、彼の心のうちに想いをめぐらさずにはいられない。
            あえて「描かない」ことによって、物語の多様性と可能性を拡げる。こういう表現もあるのだな。

            読み始めこそ、せっかく異世界からの侵略者と戦うなんて派手な設定があるんだから、もっと派手に演出すればよかったんじゃ…と思っていたが、読み進めるにつれ、この堅実さに作品の真価があるのだな、と思い始めた。
            なんたって、戦闘服はジャージですからね!超実用的!
            ワートリって、なんとなく藤子漫画を彷彿とさせる。丸っこくて親しみやすい絵柄。ユーモアと機知にとんだキャラクターの掛け合い。むずかしいことをやさしくほぐし、非日常を日常のように切り取ってみせる。
            一見地味だけど、噛めば噛むほど味がでる。まさしく、「遅効性SF」である。

            キャラクターも魅力的で、とくに主人公コンビの修&遊真は、互いの足りない部分を補い合うナイスバランス。
            個人的には、こまっしゃくれなお子さま・陽太郎と、ペットのカピバラ・雷神丸のコンビのかわいさにメロメロである。陽太郎が出てくるたびににっこりしてしまう〜。

            みんな仲良しで因縁めいた関係性はあまりでてこないので、さほど腐萌えはないかな〜と思ってたんだけど、迅さんにはサイドエフェクトで数年先の未来まで見えている、とわかってぐわっ!!!となった。
            飄々と気ままに動いているようで、彼が背負うものはものすごく重い。
            つねにみんなよりさきに「辿り着く先」を知ってしまっていて、それを覆すために、あらゆる可能性に挑み続けるなんて、並大抵の精神力じゃ無理だ。大規模侵攻編でも、笑顔のうらで落ち込んでたことを唐沢さんに見抜かれてたしな。
            迅さんが「実力派エリート」を自称できるようになるまでに経てきた葛藤とか、ひとにはいえない苦悩とか、ほのめかされている過去のこととか、いろいろ想像するだけで萌えがこみ上げる。
            9巻で三輪さんの過去の出来事に迅さんがからんでるらしいのがわかったので、このへん、はやくくわしく知りたい…!三輪さん、迅さんのブラックトリガー正式に譲りうけたんだな。このへんはやっぱり、迅の進言あってのことなんだろうか?
            三輪さんは雑誌のカットでひと目みたときから、これはいい受けだ…と目をかけていたので(いい迷惑)、今後の展開に期待。
            迅さんにからかわれるたび、いつもほんっとうに嫌そ〜な顔をしているのが楽しい。
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              「GIANT KILLING」 1 ツジトモ・綱本将也

              「監督が試合をおもしろくする!」をコンセプトにしたJリーグ漫画。

              主人公は選手ではなく、元日本代表の若手監督・達海。
              試合の行方だけでなく、地域との交流やチーム運営など、大人の事情をからめてサッカーというスポーツが描かれている。GM(ジェネラル・マネージャー。チーム運営を担う責任者)や広報担当、コーチにマスコミまでさまざまなひとの視点から、サッカーが描かれていく。
              Jリーグをよく知らない者としては、そういう「裏方」の部分が大変興味深い。

              なかでも、全国各地を駆け回ってチームを応援するサポーターたちの姿は、第二の主人公というべき存在感を放っている。いったい現地はどれほどの熱気に包まれているんだろうと、自分もいちどスタジアムに足を運んでみたくなった。
              実際、私はこの漫画をきっかけにサッカー観戦をはじめてしまいました。
              同じように、ジャイキリがきっかけでサッカーにハマッた岩本ナオ先生のエッセイ漫画「ジャイキリ読んで○○してきました」も、初心者目線での観戦のおもしろさがつまっていてオススメです。
              サッカーなんてわからなくても、スタジアム観戦はとても楽しいところなので、「応援とかよくわかんないしな〜」というひともいちど足を運んでみては。お天気のいい日なら、ぼっちでふらっと出かけても全然なしですよ。

              例年降格圏をふらついている弱小チーム・ETU(イーストトウキョウユナイテッド)。
              ETU再建のため、GM後藤は元チームメイトの達海に監督就任を依頼すべく、イギリス全土を渡り歩く。
              イギリスの5部チームで監督をしていた達海を、なんとか日本に連れ帰った後藤。自由奔放な監督に振り回されながらも、ふたたび、ともに夢を追う日々がはじまった。
              うーん、このGMと監督の関係性がなんとも萌え!
              後藤は達海のETU時代のチームメイトであり、達海の才能に心酔してるんですよね。後藤の達海への思い入れは並みならぬもので、達海のためならなんだってする心づもりでいる。
               

              「お前にしか できねぇよ」


              強敵を追い詰めながらも、金星を逃した達海に後藤はこう言葉をかける。
              達海には、かなわない。
              後藤はそう認めているのだ。もしかしたら、それは選手時代からずっと感じてきたことかもしれない。男同士にとって「負けを認める」ということは重大なことだ。それはすなわち、服従を意味する。
              後藤はかならずしも、達海のよき理解者というわけではないのだろう。でも、何を考えているのかわからない達海のことを信じ抜く覚悟が、彼にはある。

              歳は後藤の方がうえだし、達海にはない処世術にもたけている。
              言葉にはしないだけで、達海だって後藤を頼りにしているはず。かみ合わないようで、がっちり支えあっているところがすごくいいなあ。
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                「GIANT KILLING」 2‐4 ツジトモ・綱本将也

                最古参の村越をキャプテンから外し、無名の若手をぞくぞく一軍へ登用。
                まさに荒療治といえるやり方で、新生ETUのチーム作りに着手した達海新監督。
                寒風吹きすさぶ「夢の島」でシーズン開幕に向けた合宿をスタートさせるが、チームは早くも崩壊寸前の状態。選手自身に「気づかせる」達海の方針は、ただの成り行き任せと誤解され、サポーターや古株選手の反感を買う。達海をひっぱり出した張本人である後藤も、先の見えない練習スケジュールにやきもきしっぱなし。

                しかし、王者・東京ヴィクトリーを迎えたプレシーズンマッチ、ETUは激闘のすえ試合を引き分けに持ち込んだ。
                ミスターETU・村越さんの同点シーンにシビれた!大歓声が紙面の向こうから轟いてくるかのよう。スタジアムの臨場感には、スポーツ漫画でも屈指の迫力がある。
                肩書と責任をリセットし、村越はいち選手としての意地と自信を取り戻す。試合後、村越にふたたびキャプテンマークを渡す達海が、またかっこういいんだ。
                 

                前だけ向いてろ
                条件は 芝の上じゃ絶対服従

                俺を殺したいと思っても 解任されてからするように


                俺様っぽいこといってますが、要は「お前を全面的に信頼する、だからお前も俺を信じろ!」ってこと。プライベートではただの変人でも、サッカーでは他人にも自分にも一切妥協しない。それが達海猛なのだ。

                しかし、ETUはやっとあらたなスタイルの足掛かりをつかんだって程度。当然、順風満帆とはいかない。
                リーグ開幕戦、就任14年目の倉茂監督率いる磐田にETUは0-4と大敗を喫する。
                「達海…俺はお前を信頼しているから…」と神妙な後藤に、「俺 解任まであと何連敗できる?」とあっけらかんと応じる達海。
                いや〜、こんなバクダンを相手にしてたんじゃ、後藤の胃に穴が開くのも時間の問題だな!

                ただでさえまとまりのないETUは、敗戦でまたしてもバラバラに。
                それでも達海は、選手たちに「答え」を与えることはしない。選手たち自身が変わらなくては、チームは変わらない。
                まず第一に戦うべきは、敵でなく自分自身。長いリーグ戦、負けを引きずることなく意識を切り替えて、前へ進み続けることができるのか。
                何があっても揺るがない達海に触発され、ETUもやっと「戦えるチーム」になってきた。
                さあここからスタートライン。

                といきたいところですが、そのために開幕5連敗というシャレにならない代償を払ったETU。
                さすがのサポーターたちも黙ってはいない。選手バスを囲まれ、サポーターグループのリーダーと話しをしようと腰を上げた達海。その前に、さっそうと後藤が駆けつける!
                 

                監督は孤独だ だけどな達海……

                俺は 俺だけはお前の味方だ
                俺はお前を 命懸けで信じる


                なんて素晴らしい姫君危機一髪。後藤GM、達海の騎士みたい!
                どんなときも自分が思ったようにしか動かない達海だけど、後藤にだけは背中を預けられる。
                このふたりの言葉にならない信頼関係はほんとに萌え。

                きっと達海は選手時代、とんでもない夢を仲間たちに与えてきたにちがいない。そして達海といっしょに見た夢が、後藤にとってなにより大切なものなんだろう。じゃなきゃ、こんなにまるごと誰かを信じるなんてできっこない。
                というか、4歳も年下の後輩にタメ口きかれて平然としてるわけがない。笑

                いぶし銀な村越キャプテンに熱血漢のDF番長・黒田、ナルシストで気まぐれな天才司令塔・王子、チーム最年長(なんと監督の2コ下)の貫録でゴールを守る緑川さん、生意気なFW赤崎。
                個性的なプレイヤーたちが出そろって、右肩上がりに面白くなってきた。
                達海の「ジャイアント・キリング」という言葉に魅せられ、開花しはじめた俊足ルーキー・椿がヒーロー候補かな。まだまだへなちょこメンタルだし、むらっ気があるけど、それだけに伸びしろも無限大にある。今後の活躍が楽しみ。
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                  となりあうパズルのピースのように

                  ぼちぼち別宅に手を加えています。
                  昼休み手が空いたときに商品リンクとタイトルだけ入力して、家に帰ったら感想を追記、みたいな更新の仕方をしているので、更新したところで誰も見やしないという…正真正銘の自己満足。
                  黒バスの感想を追記していってるんだけど、感想を書いてると読み返したくなるなあ。
                  早々に既刊を手放してしまったのが悔やまれる…アニメかコミックスをレンタルしようかな。

                  ゆうべちょうど3期アニメでチャリアの出会い編をやってて、高尾のデキる男っぷりに興奮!語尾につねに「w」がみえるのがゆかいでかわいい。くそ真面目な緑間との漫才コンビに萌える。
                  このエピソードをみると、高尾の「ふざけてみせても、根は真面目」なところを緑間は信頼してるんだろうなあって思う。いつもへらへらしてても、やるべきことはきっちりやる。サボったり、手を抜いたりはしない。
                  きっと社会に出てもうまくやってくんだろうな、て思わせられる要領のよさが高尾にはある。
                  でも、ただ小器用なだけじゃない。ちゃんと人を見る目をもっている。緑間がどれだけ真摯にバスケに取り組んできたか。圧倒的な才能に目を眩まされることなく、高尾は緑間という選手のほんとうの「凄さ」をわかっている。だ
                  からこそ、どれだけ珍妙なジンクスやこだわりに笑い転げても、それをないがしろにはしない。むしろ、周囲を遠ざけてきただろう彼の奇矯さをおもしろがり、受け入れてしまった。
                  どんなことだって「おもしろがる」ことができるのが、高尾の強みだなあ。

                  高尾に足りなかったものを緑間がもっていたように、緑間に欠けていたものは、ちゃんと高尾がもっていた。
                  なんでこのふたりが?って組み合わせなのに、並べばふしぎとしっくりはまる。

                  断然緑高なのだけど、はじめて高緑のひとの気持ちがわかった気がした。
                  高尾に攻め攻めしさはないけど、彼氏力が高いんだな〜!これがハイスペック彼氏ってやつか!
                  努力してるけどそれをみせたがらないええかっこしいなとことか、「真ちゃんに恥をかかせらんねえよ」ってどんな無茶ぶりもきっちりエスコートしてみせるところとか。エース様への返事は「はい」か「イエス」しかありません、といわんばかりの尽くしっぷり。かといって卑屈になるでもなく、尽くし方がスマート。
                  「真ちゃんの相棒」であることにプライドを持ってるのが素敵だ。このふたりはほんとに、「背中を預け合ってる」って感じがする。
                  ただ個人的にはこういう飄々としたデキるタイプが、朴念仁にぐずぐずに崩されるのが好きなので、やっぱ緑高だな。笑
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                    「黒子のバスケ」 25 藤巻忠俊

                    別宅で書いてたら、めっちゃ長くなった&自分のなかでひっかかりが解消されてすっきりしたので、いまさら感想を転載。
                    帝光中学編、クライマックス。

                    圧勝で全中二連覇を飾った帝光中学。もはや3連覇は確約されたも同然。誰もがそう思った矢先、白金監督が病に倒れてしまう。
                    指導者を失った少年たちは、大人たちの思惑に翻弄されてゆく。

                    つぎつぎと非凡な才能を開花させるキセキたち。
                    一方、サボりをとがめられるどころか、容認された青峰は、革ジャン反抗期をさらにこじらせていく。自分を見てくれないのが悔しくてますます悪事に手を染める、非行少年の典型ともいえる状態。
                    青峰くんはほんとうにバスケに純粋だ。そして、単純なのにバカにもなりきれないのが、彼のかなしさ。
                    自分ひとりで勝てると嘯きながら、ひとりで勝ってもなんの意味もないってこともよくわかっている。完全な自家中毒だ。追いかけてきてくれた黒子にまで、「一人じゃなんもできないような奴に何がわかるんだよ!」と酷い言葉をぶつけてしまう。まるで自傷行為のような、言葉の刃。

                    青峰への特別扱いは、キセキたちにさらなる波紋を拡げる。
                    青峰に倣って練習を放棄しようとした紫原に、ワンオンワン勝負をしかけた赤司。桁違いのパワーを発揮し始めた紫原にあわや敗れるかという崖っぷちで、ついにもうひとりの「赤司征十郎」が表舞台に現れる。
                    何度見てもこの二重人格設定は衝撃的。
                    なんてったって、オッドアイの多重人格者である。尋常じゃない中二パワーに、緑間とはまたべつの意味でも震えがくる。

                    独裁者たるもう一人の赤司は、もはやキセキにとって「チームプレイ」は邪魔でしかないと言い渡す。
                    試合に勝てれば、それ以外は不問。仲間意識を失った部活は殺伐とした様相を呈しはじめる。

                    正しさに執着するあまり、心の一部を封じた赤司。
                    自分強さに絶望して、すべてを投げ出した青峰。
                    正統な競争原理が崩れたチームのなかで、目的意識を失った紫原。
                    人事を尽くさない仲間への苛立ちを募らせる緑間。
                    やっと見つけた夢中になれるものをなくして、再び倦怠にとらわれる黄瀬。
                    そして、勝利至上主義に疑問を抱き苦しむ黒子。

                    何気にこのとき、中学生の火神くんと黒子が、ストバスコートですれ違ってるんですね!なんてニクい演出。
                    このときはふたりともバスケから離れかけていて、お互いの姿すら目に入ってなかったんだなぁ。
                    もう二度と会うことのなかったかもしれないふたりが、ふたたび同じコートのうえで出会えたんだから、感慨深い。

                    チームはバラバラの状態で、6人は中学最後の夏を迎える。
                    そして、怪我によって黒子が欠場した全中決勝戦。心は未熟なまま、過分な力を持った彼らはとうとうスポーツマンとして守るべき境界線を越えてしまう。
                    勝てばなにをしてもいい。
                    もはや勝利ではなく、蹂躙ともいえるプレーで仲間がかつての親友を踏みにじったショックから、ついに黒子はバスケから離れる決意をするに至る。

                    このへんのキセキたちのプレーや言動は、いじめ問題と重なって見えてなんともいえない気持ちになる…。
                    でも、これは作者本人も意識して描いた部分があるんじゃないでしょうか。

                    彼らは強さは、生やさしいものじゃない。まさしく「次元がちがう」存在。全国大会に集いし猛者たちを相手にしてすら、まるでプロプレーヤーが子どもを相手にするようなスコアで勝ってしまう。

                    「まともな試合にもならない相手に対して、本気でプレーするなんて無理」

                    ここまで実力差が生まれてしまうと、彼らの言い分にもいたし方ない部分はあるかもしれない。
                    それでも、スポーツは対戦相手がいなければ成り立たないもの。自分たちだけで試合なんてできない。だからこそ、プレーヤーも観客もアツくするようなほんとうにエキサイティングな試合をするには、対戦相手にこそ最大限の敬意を払う必要がある。
                    フェアプレーっていうのは、ただ「ルールに抵触することをしない」ってだけじゃあないのです。

                    でも、彼らにはそれがわからない。
                    投げやりな勝利しか積み重ねてこなかった者に、「一生懸命」の価値がわかるはずがない。無意味な勝利を繰り返すうちに彼らは、自分自身のもつ「価値」すら見失ってしまったんだろう。
                    10年に1度の天才。それがどれだけ貴いものか、得難いものか、おそろしいものか。
                    自分の力が持つ価値がわからないから、おもちゃみたいに振り回して、自分もひとも傷つけている。
                    ひとってきちんと大切にされてないと、誰かを大切になんかできないんだな。
                    強さがどんどん当たり前になって、彼らのそばから、ほめてくれるひとも叱ってくれるひともいなくなってしまったことがかなしい。

                    どんな理由があったとして、彼らのしたことは許されるべきじゃない。
                    かなしいと思うのと同時に、己の才能とともに対戦相手すら無惨に踏みにじった彼らのおろかさに、ゆるしがたい怒りを感じる。
                    彼らはきっと、このとき自分自身にも呪いをかけてしまったんだろう。
                    楽しかったはずのバスケを、楽しめなくなる呪い。

                    なすすべなく見ているしかない立場にいたとはいえ、黒子は復讐を誓う被害者などではない。
                    彼もまたキセキの一員だったのだ。日向先輩のいうとおり、単純に「つらかったな、お前のせいじゃねーよ」なんて同情できるような話じゃない。
                    この25巻を読んだ時点では、黒子にもし手心が加えられるようなことがあれば、この先この漫画を読むのはキツいな〜と感じていました。黒子っちをかわいそうがる漫画なんて読みたくない…!これまでどんな逆境に陥ったときも、黒子っちは誰のせいにするでもなく、悩んで苦しんで、それでも自分の力で乗り越えてきたじゃないか!

                    そんなモヤモヤを抱えていただけに、26巻で火神くんの「おめーが悪ーんじゃん」には、ほんとうにすっきりした。
                    無責任で他人事だけど、他人事だからこそ言えた名言。これぞ、バカの力!!
                    黒子がずっとひとりで抱えてきた過去は、かわいそうがられるべきものではなく、まっすぐ向き合って乗り越えるべきもの。そうじゃなければ、大切な親友を傷つけてもバスケをつづけた意味がない。
                    もうひとりで自分を責めつづける必要はないんだ。悪意でも同情でもなく、あるがままの意味として「おまえが悪い」って認めて、それでもいっしょにいてくれる仲間ができたんだから。
                    黒子もきっと5人を倒したかったわけじゃなく、みんなの呪いを解きたかったんだろう。
                    いちばん弱いくせに、いちばん困難な道を選ぶのが黒子らしい。


                    それにしても、つらいときほどそのひとの為人があらわれるものだなぁ。
                    確固とした自分ルールを持つゆえに、良くも悪くも我関せずの緑間。
                    周囲の影響を受けやすく、優柔不断な黄瀬。
                    つねに内省的に問題と向き合う黒子は、自分ばかりを責めてしまう。
                    緑間には柔軟でひとの気持ちに聡い高尾が。黄瀬には他人にも自分にも厳しい笠松先輩が。黒子には悩む前に背中を押してくれる火神くんが。みんな、これしかない!!って相棒に巡り合えていて、もはやこれは運命としか。
                    帝光時代の彼らはきっとまだごつごつした原石でしかなくて、彼らを輝かせたのは、大事に磨いてくれたいまいる仲間たちにちがいない。心から信じてくれるひとと出会えたからこそ、みんな変わることができたんだろう。みんな、今通ってる高校に進学してよかったね…!
                    黒バスの相棒コンビみんな、ほんとうに大好き。
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